「ひとりひとりの個性と向き合う」

リバードコーポレーション株式会社

代表取締役社長 川口大輔さん


 

「Forward into the New Century ~100年企業創造~ 」をキャッチコピーに、農業資材の製造・販売などを行われている『リバードコーポレーション株式会社』。

今回は、代表取締役社長の川口大輔さんにお話を伺いました。 

 


 

鳥取出身の川口さんは「大学生になったらとにかく外に出てみたかった」のだそう。東京の大学に進学し、学生時代を過ごされました。東京での生活は好奇心で満ち溢れていました。

 

その年齢でできることは全部やる

 

「意識していたのは、『その年齢でしかできないことをやろう』ということ。」

 

睡眠時間を削り、『やれることは全部やる』意識で生活していたのだとか。

 

 

「若い頃から人に恵まれていた。二回り、三回りも上の人と接していたし、もちろん学生とも接していた。色んな人から色んな教えを受けていた。影響されやすいので、言われたことをどんどん実践していた。」

 

「元々深く考えるタイプではなく、どんどん身体を動かすタイプだったので。」

 

 

 

東京で4年間大学に通い、2年間社会人として働いた川口さん。

『もっと広い世界を見てみたい』『もっと色んな人に会ってみたい』という思いからアメリカへ行くことを決意します。

 

「学生時代から旅行が好きでよく行っていたんです。当時から『住まないと見えない世界ってあるんだろうな』と考えていたこともアメリカに渡った理由のひとつでした。」

 

 

 

アメリカで感じた日本との違い

 

ーーアメリカではどういうお仕事をされていたんですか?

 

「コンサルティングファーム※1 に入っていました。間接部門※2 のアウトソーシング※3 のコンサルです。」

 

 

 

ーー日本のビジネスとアメリカのビジネスの違いは何ですか?

 

「根本的に違う。スピード、考え方とか、契約書社会かどうかとか。その意味で日本は10~15年遅れている印象です。」

 

「各個人の裁量のレベルが違う。例えば銀行窓口。アメリカでは、窓口の人は色んな判断ができる権利をもっている。日本だとそれがない。『ちょっと担当者呼んできます』とかになったり。」

 

「アメリカでは、裁量とか権利とか自分で提案したりとか、イエスノーを言う権利をみんなが持っていた。判断する権利があることで力がつくのだと思います。」

 

 

 

10年間アメリカで暮らした後、会社を継ぐために鳥取に帰ってきた川口さん。

長年培ってきた自社の仕組みに、アメリカの良いところを取り入れるべく、改革を図りました。

 

 

 


 

※1 コンサルティングファーム

企業の抱える課題に対して意見を求められ、解決まで導く企業のこと。

文中の「コンサル」は企業の課題を解決まで導く職能を持った人のことを指す。

 

※2 間接部門

売上に結びつく業務を担当する直接部門(営業など)を支援する部門のこと。人事、総務、経理など。

 

※3 アウトソーシング

 

業務の一部を外部に委託すること。

 


役職呼称禁止、会議禁止

 

「弊社は、社員を役職で呼ぶ者はいない。社長とか専務とか課長とか。今日入ったアルバイトでも、私のことは『川口さん』と呼ばせている。」

 

「鳥取に帰ってきてはじめの頃に導入した。役職で呼ぶのは日本だけ。他の国では聞いたことがない。」

 

 

 役職呼称禁止を社内に通達した際には、さすがに動揺が走ったようだ。しかし、川口さんはブレない。更なる施策を打った。

 

 

 

「基本的に会議はやらない。定期的な会議はあるが、それ以外の会議は私の承認がないとやらせない。で、承認取らないからやらない。」

 

「会議っていうのは上司の自己満足。部下に勝手に判断されたら困るとか。部下にしても、事前に共有することで怒られないようにしたいから会議する、とか。」

 

「ビジネスっていくら議論しても、正しいかどうかはやってみないと分からない。百発百中で当たるわけがない。」 

 

 

「社内では反発もあったりする。『意味があると説明できたら継続してもいいよ』と私は言う。誰も説明できたことはないんだけどね。」 

 

意味のないことはやらない。

海外のビジネスを見てきたからこそ、日本の古い慣習を率先して変えていこうという姿勢が伝わってくる。

 

 

 

人は千差万別、個性を大切に

 

ーー今の学生は、二極化しているなぁという印象を受けます。途上国支援等で海外に行きたい学生か、地元に帰って役場に勤めたい学生か。リバードコーポレーションさんとしては、若者の目線をどう見ておられますか?

 

「人って千差万別。会社にも色んな人がいて良い。色々な国に行きたい人も良いし、地元に残りたい人も良い。」

 

「どんな人を採用したいとかじゃなくて、色んな人を採用したい。その個性を伸ばし切れるかどうかが会社のチャレンジだと思います。」

 

「強みを持っていることが大きなポイント。ただし、人柄や雰囲気にはこだわります。感じのいい人か、いい雰囲気を持っているか。笑顔がいいとかも大事だね。それは作れないものだし、準備できないものだから。本質的に持っていることが能力。それ以外は全部人それぞれの個性だと思う。」

 

 

 

『個性』にこだわる川口さん。他の人と違うものが相手から見えたとき、それをマイナスに捉えるのではなく、個性として受け入れる。そんな考え方も『自由の国アメリカ』につながるものを感じさせる。

 

 

 

儲かる農業を作る

 

ーー会社の未来、今後取り組まれたい事業について教えてください。

 

「鳥取に縁があって戻ってきたので、地域に貢献できることをしたい。これは絶対条件。」

 

「鳥取の農業にもっと力を入れたい。農業は鳥取の強みだと思うし、そこに挑んでいきたい。儲かる農業をつくっていきたい。農家の方たちのために。」

 

「農家が儲かれば、農家になりたい人も増えていくんじゃないかと。農家って儲からないから、生活できないから担い手がいない。鳥取の専業農家って、現在ほぼいらっしゃらない。儲かる仕組みをつくって地元に貢献できたらと思っています。」

 

「それができたらこの地に戻ってきた意味があるのかなと。」

 

「まさに現在、農業の動きを色々とはじめています。今年中には新しいチャレンジを発表する予定です。イチゴ観光農園をやろうと思ってて。今年スタートで。」

 

 

 


 

東京、アメリカ、鳥取と場所は変われどやるべきことは変わらない。

 

一つ一つの経験をつなぎ合わせ、今を生きる。その覚悟を川口さんの言葉から感じました。